2011-01-18から1日間の記事一覧

娘は、蛍と呼ばれていた。それが本名かは知らない。放蕩の果てに、私が見つけた、苦界の中の小さな花だった。 何度となく廓に通い詰め、気を楽にして語れるほどに昵懇になると、蛍の口の端からは、時折、耳慣れぬ抑揚の言葉がこぼれた。それは北国の言葉で、…