かなちゃんのせんたくき

かなちゃんの せんたくきが こわれてしまいました。
はいすいホースが つまってしまったのです。
かなちゃんのママは、こまったかお。
 
「これで こわれるのは にどめよねぇ。
さいきん せんたくものの しあがりも よくないし・・・
あたらしい せんたくきに かいかえちゃおうかしら。」
 
かなちゃんのママは さっそく、
あたらしい せんたくきの カタログを ながめています。
 
「まぁ、こんなに やすいのねぇ。
しあげも とっても きれいになるのねぇ」
 
そんな ママの ひとりごと。
かなちゃんの せんたくきは、とっても かなしくなりました。
 
「ぼくは いっしょうけんめい やったんだけどなぁ。
ぼくは、もう、じだいおくれなんだ。
かなちゃんの シャツを、きれいにしてあげることも、できないんだなぁ。」
 
かなちゃんのせんたくきは、かなちゃんが だいすきです。
かなちゃんも、せんたくきが だいすき。
せんたくきが、ごーごーと せんたくものを まわしているのを、
かなちゃんは いつも にこにこ ながめています。
 
「せんたくきくん がんばってね」
「かなの シャツ いつも きれいにしてくれて ありがとう」
 
かなちゃんは いつも そんなふうに やさしいこえを かけてくれるのに
ぼくは そんな かなちゃんのシャツを きれいにしてあげられない。
 
せんたくきは かなしくて かなしくて
ただただ ぼおっとしておりました。
 
・・・きがつくと、せんたくきの まえに
ちいさな おんなのこが たっておりました。
 
かなちゃんと おなじくらいの ちいさな おんなのこです。
かなちゃんよりも ずいぶん ひやけして ずいぶん やせています
でも、おめめは かなちゃんと おなじくらいに
くるんとまるくて おおきなおめめ。
 
「あなたは だあれ?」おんなのこが いいました。
「ぼくは せんたくきだよ」せんたくきは いいました。
 
「せんたくきって なあに?」
「みんなの ふくを きれいにするのが しごとだよ」
 
そういってから みてみると
まあ おんなのこの きているふくの きたないことったら!
どろだらけ しみだらけ なんだかいやなにおいもします。
 
「ここには ほかの せんたくきは ないの?」
「せんたくきなんか ないよ。」おんなのこはいいました。
 
かなちゃんのせんたくきは、はじめて じぶんが、
みたこともない ばしょに たっていることに きづきました。
まわりには どこまでも みどりのきぎが ひろがり、
ちゃいろい つちの うえに
きで できた いまにも こわれそうな いえが ならんでいます。
 
「ふくは どうやって あらうの?」
「みずが ないから あらえないの。」
 
ふくを あらったことがないのか。
せんたくきは びっくりしました。
 
「よし、じゃあ、ぼくが、きみのふくを きれいにしてあげるよ」
 
おんなのこは おおよろこび。
きている ふくを ぜんぶぬいで せんたくきのなかに、
ぽん、とほうりこみました。
 
なんてふしぎ。
みずも でんきも ないのに、
せんたくきは、まほうのように うごきだしました。
 
じゃばじゃば ごーごー ぐるんぐるん
 
あっというまに どろだらけ しみだらけの
おんなのこの ふくは まっしろに しあがりました。
 
「すごいすごい」
「きれいだねぇ」
「ぼくのもきれいにして!」
「わたしのも!」
 
せんたくきの まわりに いつのまにか
たくさんの こどもたちが あつまってきました。
 
じゃばじゃば ごーごー ぐるんぐるん
じゃばじゃば ごーごー ぐるんぐるん
 
こどもたちの よごれたふくが つぎつぎ まっしろになって
せんたくきから とびだしてきます。
みんな にこにこ えがおです。
せんたくきは、おもいました。
 
「いいなぁ。みんなにこにこしている。
ぼくは ここに ずっといたいなぁ。
みんなが ぼくのせんたくした きれいなふくで
にこにこ えがおになれるなら
もうすっかりこわれてしまって
うごけなくなるまで ここでくらしたいなぁ」
 
そんな しあわせなきもちで せんたくきは なんだか
ぼおっとしたきもちに なりました。
 
・・・なんだかあたたかい ちいさなものが、
せんたくきに さわっています。
せんたくきは めをさましました。
そう、あれはみんな せんたくきのゆめ。
ここは、かなちゃんのおうちの、せんめんじょです。
 
でも、なんでしょう、このちいさな あたたかいものは。
それに、ちいさな なきごえもします。
 
「せんたくきさんを すてちゃだめ。
せんたくきさんは かなのおともだち。
せんたくきさんは かなのたからもの。
こわれたって しゅうりすれば ちゃんとなおるの。
せんたくきさんと おわかれするのは いや!」
 
かなちゃんです。
かなちゃんが、せんたくきに だきついて、
ぽろぽろないています。
 
せんめんじょの いりぐちに かなちゃんのパパとママ。
ふたりとも、なんだか こまったかおで、かなちゃんをながめています。
 
「わかったわかった。せんたくきさんを すてたりしないよ」
かなちゃんのパパがいいました。
 
「しゅうりやさんに でんわしたから すぐなおしてもらえるって」
かなちゃんのママがいいました。
 
かなちゃんは、ぽろぽろなきながら うれしそうに にっこりしました。

「ああ ぼくは かなちゃんのことがだいすきだ。
ちゃんとしゅうりしてもらって またうごけるようになったら
いっしょうけんめい かなちゃんのシャツをきれいにしよう」
 
せんたくきはそうおもって、
なんだかうれしくて、ぼおっとしたきもちでおりました。